子供のころ、家に講談社のトーベヤンソン全集があったので、収録されていなかった「小さなトロールと大きな洪水」と「ムーミン谷の十一月」以外は結構読み込んだ覚えがある。「楽しいムーミン一家」は英語版のペーパーバックまで持っていた(高校の英語教師が何でもいいから1冊原書を読めとうるさかったので、文章が平易で日本語訳が手元にある本として買った)。
察するに、「小さなトロール」が収録されなかったのは、絵柄が固まる前の作品でアニメの画とかけ離れていたためだろうが(「十一月」は全集が出た後に出版された)、それ以降でもペンで細かく書き込まれ、ややとんがった絵柄はアニメ版とはずいぶん違う。どちらが僕にとってのムーミンなのかはちと難しい。さすがにアニメ版かなあ。
今でもそうだが、ちょっと斜に構えたあまりかわいくない子供だったので、中学生のころ「将来なりたい職業を書きなさい」というアンケートに「年金生活者」と書いたりしていた。で、もっと前の時期になりたかったのが「スナフキン」だ。あの生活臭のなさが大好き。スナフキンは釣りをしてたりはするけど、基本「労働」はしない。普段は釣った魚などを食べるにしても、ギターの弦だって買わなきゃならんし何らかの収入は必要なはず。でも、ギターを弾いてるときも帽子はかぶったままで、ひっくり返して地面に置いたりしない。出自はわかってるから、別に親の遺産で食べてるわけではない。スナフキンがムーミン谷にやってくるのは春から秋までで、みんなが冬眠する冬場は谷を出て行く。彼はきっとその間に何がしかの仕事をして、生活の糧を得ているのだろう。凍てつくフィンランドを離れスペインかイタリアあたりの港町で仕事に精を出すスナフキン。これはこれで素敵だと思うが、谷にいるときのスナフキンはそういった部分はおくびにも出さないのだ。実にカッコいい。なんかイチローみたいだなあ。
ムーミン展は今から1年かけて全国を回ります。お近くに来たときは贔屓にしてやってくださいませ。
(追記)
「小さなトロール」は出版後すぐに絶版となり、再版されたのは「十一月」より後なんだそうな。それじゃあ無理だわ。
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