2009年11月14日

脱皮する家

地図に載っている集落名は「峠」なのだが、案内表示も土産物屋の米の産地名も「星峠」。松代でも有数の棚田の名所で、「天地人」のオープニング映像もここなんだとか。もっとも、目的が違うので今回は棚田のビュースポットまでは出向かず。途中の棚田でも十分美しいけどね。

明るいうちに脱皮する家に到着し、こへびの女の子や他のお客さんと歓談。とりあえず荷物を搬入させてもらい買出しのため松代に戻る。夕食のみ頼んだので朝食が必要だったのだが、併せて晩酌用の地酒も購入。

星峠に戻る頃にはすっかり雪になっていた。「家」は既に公開時間が終わっているため無人となっている(当然、カギなどかかっていない)。勝手に上がりこんでストーブをつけてくつろぐ。夕食(仕出し)が届き、管理人の地元のおばちゃんがやってきたのは1時間ほど後だ。がらんとした空間にヨメと二人、屋根から雪の塊が落ちる音、時折あられが降る音はするがやけに静かだ。下見を済ませて勝手がわかってるからいいけど、暗くなってからいきなりここにやって来るのは肝試しだな。

おばちゃんの指導で屋根のない場所にクルマを移動(下手に屋根があると落ちてきた雪で傷が付く)。この時点でクルマの屋根には雪が積もっていた。それから夕食。派手さはないが、これもまたおいしゅうございました。おばちゃんは、こへびの娘たち(男の子もいるけど)の後片付けがなってないと愚痴っていたが、結局のところ相手のことを認めているから愚痴も出るわけで、棚田見物に来る人達への苦言と比べても温かみがある。10年の時を経て芸術祭がちゃんと地域に根付いていることを実感した。
詳しくはホームページなどを見てもらいたいが、古民家の余計な仕切りを取っ払い、壁や構造材を彫刻刀でひたすら彫りこんでいく。言ってしまえばそれだけの作品。ただ、その労力を思うと気が遠くなるけど。
石油ストーブ2台とホットカーペット、こたつが暖房器具。後はおばちゃんがくれた使い捨てカイロ。それからあったかいお風呂。
天井はこの状況。彫ってから組むのならまだしも、出来上がった家の小屋裏を彫りこんでいくんだから大変だ。
この床の間は結構お気に入り。
「作品」なのでカーテンとか障子とか視界を遮るものはない。がらんとした空間にいると、舞鶴に引っ越した当初のことを思い出した。あの時は4月だと思って暖房器具を処分して引っ越したのに、やたら寒くてお風呂と布団だけが頼りの日々。それを思えばずっと快適だよね。ストーブは偉大だ(途中で給油のため1台にしたらやっぱり寒かったし)。ただ、天井がないので暖められた空気は小屋裏まで一気に上ってしまう。サーキュレーターを持っていけばよかった。
キッチンへの渡り廊下?もご覧の通り。ただ、右手のキッチンやバスルームは(後から追加したためか)普通の空間で、特に彫りこんではいなかった。でも、快適。お尻も洗ってくれるし。

せっかく芸術祭に来るんだから、出来れば一泊くらいは「作品」に泊まりたい。できればドミトリーでないところ、という条件で探して、空きがあったのがこの 「脱皮する家」だった。ホームページやガイドブックを見るぶんにはさほど面白そうに見えなかったが、他に選択肢はなかったのだ(月曜の夜になったのも同じ 理由)。実際、昼間わいわいがやがや見たときにはそれほど面白いとは思わなかった。しかし、夜になると見え方はずいぶん違う。もちろん、ヒマだからメイキ ングビデオやパンフにじっくり目を通したこともあるのだが、そういう「知識」の面を抜きにしても、夜の闇と降りしきる雪の中での「家」の存在感は絶大だった。まあ、普通の夜だとどんなのかはわからないけどね。

実は荷物部屋?には普通のテレビも置いてあったのだが、ちょっと見る気にはならなかった。ケータイにはずいぶんお世話になったけど(圏外かとも思ったけど、不安定ながら通信は可能だった)。
さて、雪は夜半過ぎに一旦止んだため、恐れていたほどの積雪にはならなかった。クルマの屋根で10cm弱まで。
この「へそ」が最後に彫りこんだ場所らしい。

外が明るくなるとまた雰囲気が違いますね。

一旦雲が切れて朝日が覗き、やれやれと思ったのもつかの間、すぐにまた雪が降り始め、結局直江津に出るまで止むことはなかった。朝食後、雪が止むのを待っていたが、ちょっと無理そうだったので開館時間の前に退散する。雪の峠をノーマルタイヤで下っていくのはなかなかスリリングでございました。さすがに、峠をさらに登って棚田を見に行くのは自殺行為なので断念。

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